晴耕雨読

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忘れてしまうから残す

1114 将来の夢はなんですか

そんなこと、22歳にもなった人間に聞くんだ、とハッとしたわたしは「本に関わる仕事が、したいですね」と少し言葉を濁してそう口にしていた。本当はもっとその先に具体的な夢がある、のだけれどなるほどと手元のメモ用紙になにやら書き留め出したお姉さんを遮ってまでは、ちょっと言えなかった。将来の夢はなんですか、って、そんなのまるで小学生の頃に先生がよく口にしていた質問のようじゃないか。字面もなんだか可愛いし、もっと他に大人風な言い様がある気がするけれど面接を受けに来た人みんなにもしかしてそうして聞いているの、かな。そう思って今、また改めて考えてみている。将来の夢はなんですか。将来の夢は、なんだろう。ちゃんとその時は最後まで答えられなかったけれど、答えられなかった、と、そう思っているということは答えを自分で持っているということであって、それにはちょっとホッとする。好きな本、好きな映画、好きな芸人、好きな音楽、今までやったアルバイトで印象に残っていること、とか、「えっ、そんなことまで聞くんですか?」とつい口からぽろっと零れてしまいそうなことまで聞かれた、不思議な面接だった。終わってからスマホの電源を入れると17:21と時計を表示させるロック画面が目に映る。あんなに話したのに21分しか、むしろ19分くらいしか経っていないのか、と肩の力をふうっと抜いた途端にひどい疲れを感じた。雑誌でよく見る俳優の方々が100問100答している企画とかって、もしかするとあんな感じなのかなーなんて思ったりもした。短所も長所も聞かれたが、案外するする答えることが出来ていた自分を、ちょっぴり誇りに思ったりもした。あなたの将来の夢は、なんですか。ちょっと子供じみているけれど、大人にだって誰にだって問いかけたっていい質問やんな、別に。そう思いながら自転車で心斎橋を少しだけ走った。今日は風がつよくて冷たい。