晴耕雨読

晴耕雨読

忘れてしまうから残す

1112

大阪駅から地元の最寄り駅まで走っているバスが好きで、特になんの拘束時間もなければ乗るようにしている。通るバス停は33個。かかる時間は約1時間。運賃は210円。だいたい夕方から夜にかけての時間に乗ることが多い。窓の外に映るそういう時間帯の景色は俗に言う“幻想的”というやつで、キラキラした光や人とで溢れる大阪の中心街からゆるっとした静かで地味な地元にかけてを走るさまは、何度見たって不思議と飽きない。綺麗だなあと素直にいつも思う。あー大阪を横切ってんなーと、今日も流れていくそれらを横目でたまに何かを思い出したように見つめながら、本を読んだり、スマホをいじったり、音楽を聞いたりしていた。1時間なんてあっという間だ。つまんないバイトをしている時にはひどく長く感じられるっていうのに、好きこそ物の上手なれとはほんとによく言ったものだななんて思ったりする。最初に乗った時は空気よりも人の方が多かったような車内も時間をかけて少しづつ少しづつ空白が多くなっていく、それもまたいいなと思う。バスを一番最初に降りて少し歩いたら満月が見えた。とりあえず片目を瞑ってつまもうとしてみたりする。狼男はどこかでワオーンとでも吠えながら狼になってるのかな。夢のあることをたまには考えたりしながら、イヤフォンをぐるぐるとしないまま適当にポケットにつっこんだ。


たまにフッと、「ばあちゃんとじいちゃんっていつ死ぬんやろ。もう歳やしいつ死んでもおかしくないよな」と自分で考えておいて泣きそうになることがある。めちゃくちゃ悲しいだろうな。葬式なんか泣きじゃくって仕方ないだろうな。ちっちゃい頃からおばあちゃん子だった(とわたしは思っている)から大切にしたい気持ちはものすごくあるのだけれど、家族を大切にする、大事にするっていうのがまだちょっとよく分からない。立派な大人になること?誇れる娘に、孫になること?たくさんお金を稼ぐこと? いつか、なにもわたしが恩返しをできないままに2人はいなくなってしまうんじゃないか、そんな途方にもないことを考えながら「ただいま戻りましたー」といつものドアを開ける。それぞれのおかえりの声が帰ってきて、その途端、お腹がグウと鳴った気がした。