晴耕雨読

晴耕雨読

忘れてしまうから残す

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鎌倉にいた時、体調を悪くしたことがほんの一度だけあった。バイト先で仲良くしてくれていたひとつ、もしくはふたつほど年上のお姉さん2人に誘われてディズニーシーに行く、その前日だった。まだ今年になりきっていない冬真っ只中のあの頃、出会ってから2ヶ月も経っていない、少しよそよそしさが残る中2人は誘ってくれた。ただただ嬉しかった。念願の初ディズニー。その前日のことだった。ものの見事に崩れる自分の体調。今思えばすごいタイミングだったなと思うがその時はそんなこと微塵も考えちゃいない。ただただ頭がぼーっとして何もする元気がなかった。熱があったのかは体温計がなかったのでわからないが、あったのかもしれない。さて、なぜ急にこんな話をしたか、というと、ただふっと、その時宿のオーナーがつくってくれた手作り足湯のことを思い出したから。バケツに入った暖かいお湯に私は両足を突っ込んで、小一時間ほど読書をしている、その風景が客観的な情景として頭に浮かんできたからなのだが、最近こういう、突然なんの関係の無い記憶がふっと蘇ってくることが多いように思う。なにかの前兆、予言、予報、……いやはや前触れ、なのだろうか。なんにせよ、いいものであってくれればいいのだけれど。正直言って、こういうのは少し怖い。




明日から1週間バイトを頑張れば、向かうは東京。大阪に帰ってきてからというもの、結局これでは1ヶ月に1回は東京に行っている、という計算になってしまう。東京が好き、なのかもしれない。前は好きだ、と言い切っていた思っていた、思い込んでいた、けど今はそれがよく分からない。考えすぎてぐるぐるして、回り回って分からないことばかりだ。東京もいいけど気になる街にも行きたい。静岡。山形。石川。鳥取。北海道。長崎。じいちゃんが月末から田舎の長崎に帰るという。何をしに行くかはよく分からないが、車で行くため10時間くらいはかかるらしい。あータイミングが悪い。東京に行く予定がなかったらトラックに乗り込んででも連れて行ってほしかったのに。と言おうとしていたら「小さい頃お前なあ、じいちゃんの車に乗る!って言って長崎まで連れていこうとしたけど途中からめちゃめちゃ嫌がってなあ。覚えてないやろどうせ」という話をされた。いや、なんか覚えている気がする。そう言われてみればなんとなく駄々をこねる自分を思い出せてしまうような。でももしかするとそれはただ、思い出せないから自分が作り出してしまった幻想なのかもしれない。泣きじゃくる小さな自分。その横にいる、だから言ったやろ、的ななにかを呆れながら言っている運転手のじいちゃん。そのあとは、よくわからない。一緒に向かっていた家族の車に乗っかったんだろうか。不思議な感覚だなと思う。手作り足湯の記憶もそうだが、どうして記憶というものは自分を客観的に見つめている第三者からの目線なのだろう。いろいろ考えているとやっぱり、長崎に行きたくなってしまった。