晴耕雨読

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忘れてしまうから残す

本屋B&Bって、もしかするとわたしにとってのスタンダードブックストア心斎橋店なのかもしれないと思った話。

スタンダードブックストア心斎橋店が2019年4月7日の21時に閉店した。自分で書いていてもう泣きそうなのだけれどもうすぐ3ヶ月が経つ。そんな変なタイミングでスタンダードブックストア心斎橋の話を書き出そうとしているのは、下北沢にある今とても好きな本屋B&Bの求人広告を見て、「あぁ、スタンダードブックストア心斎橋に対するあの頃の気持ちと同じような気持ちを自分はB&Bに対して抱いているかもしれない」と思ったからだ。思った、というよりも、思い出してしまった、の方が近いだろうか。


ずっと好きだった。大阪で1番好きな場所は?と聞かれれば「そんなん決まってるわ。スタンダードブックストア心斎橋やで。行く?」なんて言ってしまえるくらいには。もうずっと、ずっと好きで、今でも大好きなのに最後の最後に足を運ぶことも出来なくて、その時はなんとも思ってなかったのにもう3ヶ月が経ちそうなこの今に、寂しさを感じている。何度も足を運んで、買い物して、本読んで、癒されて。心斎橋駅で降りて、方向音痴だから今でもどう行けばいっちばん最短で着くのか分からないけれど、人がまあまあ居て店がわさわさとある道を適当にフラフラ歩いていたら「あ、だいたいこの辺だな」ってところに着いて、そしたらふっと見つけて、右側にあるカフェの看板を横目に重たいドアをグッと押して、そしたらもうそこは大好きな、大っ好きな空間。


つい最近「元カレのことを引きずる人のことがほんまに分からんねんな」と友人にぼやいてしまった。でも、あーもしかしてこういうことなの?そうなの?と やっとわかった気分だ。もうめちゃくちゃ(ひきずっている。またあの場に行けば会えるんじゃないか、あそこにいけば君(店)はいるんじゃないか、なんて未練たらたら。たらたらを通り越してもうだらだらだ。もう会えないのに、今も会いたい。はやく会いたい。会ってぎゅっと抱きしめたい。その店の商品をぎゅっと。いや嘘だけど。そこまではしないだろうけれどとりあえず大きく深呼吸くらいはさせてほしい。


スタンダードブックストア心斎橋店で働きたいなと思っていた時期があった。あの頃自分はなにをしてたんだろう。大学生?高校生だったかもしれない。何らかのやむを得ない事情により応募すらもしなかった。すればよかった。もうそれも叶わなくなってしまった。レジの店員のお姉さんがかわいかったこととか、お金のかぞえ方が綺麗だったこととか、ここで働けたら幸せだろうなって考えていたときのこととか。あの頃の自分にしか、感じられなかったものがあったんだと思うと、やっぱりどう考えても寂しい。


そんな愛するスタンダードブックストア心斎橋店がなくなった今、1番好きな本屋は?と言われると東京の下北沢にある本屋B&Bである。別に内装が似てるとか、雰囲気が似てるとか、そんなことはたぶんない。共通しているのは『本屋である』ということと、『なんとなく好きだなと自分自身が感じている』ということ、だけ。ほんとうになんとなく好きなのだ。置いてある本もしかり、雰囲気もしかり、空間もしかり(店内はもちろんスタンダードブックストア心斎橋店よりめちゃくちゃ狭い)。本屋B&Bはイベントをさかんにやっているが、特にそこにも気をとめていないし。むしろ未だに1度も参加したことがない。いつかは参加してみたいなとは思っているが、そのままになっている。


今回は前例もあってか、実は求人応募をなんと試みている。結果はしかし自分の不甲斐なさにより採用には至らなかったが、申し訳ないがそれで良かったんじゃないかな、と思ってる。本屋で働きたい気持ちが変わった訳では無いが、スタンダードブックストア心斎橋店と比べると、まだまだ愛が低い。高いのだけれど、でも絶妙なラインにいる本屋B&Bとは、本屋とお客さんという立場で付き合っていたい。近すぎず、遠すぎず。それがいい気がする。それでいい、と、まあ少しは自分に言い聞かせているようなところもなきにしもあらずではあるが。



「働いてみたいな」と思える本屋に出会えたこと、それ自体がもう自分にとって嬉しすぎることなのである。スタンダードブックストア心斎橋の求人を見て即死に感じたあの時の思いと、きっと一緒だった。働けたら楽しいんだろう。どんなことができるんだろう。ワクワク、ドキドキは、きっとおんなじものだったに違いない。スタンダードブックストア心斎橋店がなくなった今、同じような気持ちを抱いている本屋B&Bにはこの先何度も何度も通うことになる。本を買うこともあるし、本を買わないことだってあるし、気分が落ちている時にあの重いドアを開けることもあるし、友人を連れてくることも、もしかするとあるかもしれない。いなくなってしまったことは悲しいことだけれど、ありがとうという気持ちで、締めくくりたいと思う。ありがとうの気持ちしかない。何度言ったって足りないくらいだ。





スタンダードブックストア心斎橋へ

大好きでした。心の余裕がないときも、あるときも、財布の余裕がないときも、あるとにも、いつだってそこに行けばどんと大きな門構えで待っていてくれて、嬉しかった。オムライスも美味しかったです。またいつか、どこかで出会えますように。またいつか。幸せでした。お疲れ様でした。ありがとう。本当に。



ありがとうございました。
ありがとうございました。



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