晴耕雨読

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忘れてしまうから残す

0824 鳥肌が波打つ

かなり久しぶりに本屋に行った。欲しかった本を探して向かったのは横浜そごうの紀伊国屋書店で、グルグルとほとんどのコーナーを見て回る。新書、文庫、雑誌、カルチャー本、啓発本、政治、IT系、哲学書、資格本、医学書、絵本、児童書。気分的に読みたい気持ちが浮かんだ本を手に取っては数ページ眺めて戻したり、目次を見てちょっと気になるページを読んでみたり、おそらく何日も誰にも見つけられていなかったのだろう奥に面出しされているにもかかわらずホコリを被った本を手に取っては右手で表紙をさすってやる。買いたかった本、鉄塔さんこと賽助先生の最新刊『今日もぼっちです。2』は無事に見つけた。でもその第1巻がその棚のどこにもなくて、検索機で調べてみても在庫は1巻だけ“なし”になっていた。残念。重版が決まったってTwitter(Xだけど)で見たけどまだ入荷してないのかあ、1をまず読みたいけどなー、の気持ちでとりあえず2の最初の数ページを読んでみたらでも鉄塔さんに似つかわしくない“ナンパ”がどうとか、と書いてあって初手で心を掴まれたのでワハ、と笑って買う。帰りにあと1周するか、と回っている間にアセクシャルについての本が目に付いた。相変わらず自分がそれと呼べるものなのかどうかの踏ん切りはずっとつかないままで、その本に書かれていることもネットで調べられるものとさほど変わったことは書かれておらず、ふう、と何も無い宙を一瞬見つめて息を吐く。まあなんでもいいんだけど、でもなあ、と横で別の本を熟読するおじさんを横目にその本をそっと戻し、それでもうなにか満足したのかわたしは本屋をすぐ、後にした。左手に最近つけている時計を見ると5時とか6時とか。だいたい2時間くらい居たようだった。外はまだ明るい。

その後、適当に入った喫茶店でだらだら本を読んでいたら19時で空もどこも真っ暗になっていて、それはそれでまだ夏なのか、と思う。鳥肌が波打つ、泰然と屹立する、憤懣やるかたない、烏羽色の瞳とジャンパー線のような睫毛……賽助先生の『君と夏が、鉄塔の上』に出てくる妙な語彙をノートにメモしながら、鉄塔さん、こんな爽やかそうな少年の恋の物語なのにやけに難しい言葉を使うもんだ、と、それこそ鳥肌を波打たせながらわたしはまたワハ、と笑った。外に出るとむわり、と熱気がまとわりついてきて、夏はまだ終わらないんだなあ、と、また思う。9月はもう、すぐそこだ。