晴耕雨読

晴耕雨読

忘れてしまうから残す

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買う予定もなにもない、ただただ可愛さに惹かれてしまっただけの2万3000円くらいであろう上着を試着しながら接客をされている時、オシャレな人は服屋の店員の接客を受けるんだろうか、受けなくったってオシャレなんだから実は受けたくなかったりするんじゃないだろうか、なんてことを頭の片隅の方で静かに考えていた。緑が好きだと私が言ったからか、お姉さんが向こう側のラックから蛍光緑のパーカーを持ってくる。たしかに可愛い。持っていない色味でいいなとは思う。「うわ、めっちゃ可愛いですねえ」と本当に思っているのと、でも別に要らないなーなんか薄いしそんなに好きな色味でもないし、と思っているのとで半分こにした感情で、でも前者を全面に押し出すようにして「蛍光か〜」とわたしは声に出していた。自分が欲しいなと思っていた服を「いいですね」「かわいいですよね」と一緒に言い合うのもまあ苦手だとしても百歩譲っていいとして、その後に店の商品を「こういうのとかも合うんですよ」と勧められたりするのはさすがに胸が詰まる思いがするというか、実際それで買おうと思って一緒に買ったことは一度もなかったりする。服に関しては自分はわりとめんどくさい方なんだろう。昔からそう。安定を求めつつも自分の好きな物は割とはっきりしていて、そこからあまりブレたくはない。人に流されて買った服をわたしが着た試しもない。この先着なくなるであろう服はなるべく買いたくなんてないのだ。まあ、そんなことは当たり前だとは思うのだけれど、家族と買い物に行っていい思い出がないわたしは、ついそんなことを考えてしまったりする。「また来ます」そう強く伝えてその店を後にした、その時の店員さんの顔はおそろしく微妙だった、そんな気も今はしている。