晴耕雨読

晴耕雨読

忘れてしまうから残す

2019年11月4日月曜日、感覚ピエロが幕張メッセでありあまるほどの「ありがとう」をくれたその日はもう、この先二度とやってくることはないけれど、という話。

「ありがとう」と何度も言う横山さんのその姿が印象的だった。ありがとう、来てくれてありがとう、俺達を好きになってくれてありがとう、応援してくれてありがとう、もう、全てひっくるめてありがとう、ありがとうしか言うことがないよ、俺はもう、と。それは「ありがとう」をまるで、そう、その場にいる全員に、それもひどく丁寧に丁寧に手配りしていくかのように「ありがとう」と言っている、むしろ唱えている、そんな風に見えたし聞こえた。だから、届いてきたんだと思う。2階席にいたわたしにも、きっと会場中の誰の心にも、だからこそちゃんと、届いてきていたんだ、と、そう確信めいたものを感じている。それくらい確かで、切ないくらい気持ちのこもった「ありがとう」はおそらくなかなかない気がする。「ありがとう」以上の、なにかもっと別の愛しくてたまらない、言葉になんてしきれないあふれんばかりの想いも、感じざるを得なかった。そんなことも、この先早々ないんじゃないかと思う。2019年11月4日月曜日の、肌を突刺すような冷たい風の吹くあの夜。きっとそうだ。感覚ピエロの史上最高規模、幕張メッセワンマン公演『感覚ピエロ 5-6th anniversary「LIVE - RATION 2019 FINAL」~幕張ヴァージンはあなたのもの~』はもう二度と来ることの無い過去のものとなってわたしの記憶の中へと消えていったけれど、全く寂しくないのはきっとそのせいだ。だってほら、まだまだわたしは彼らからもらったありあまるほどの「ありがとう」を抱えたままでいる。そしてどうにもできずにいる。どうにもしたくない気持ちでいる。あわよくば、馬鹿みたいにずっとずっと抱えていたいとさえ、思っている。感覚ピエロが、次に幕張メッセイベントホールをパンパンに膨れ上がらせる、その日まで、ずっとずっと持ち続けて、そうして。





ここから先はセトリに触れたいという気持ちを持ちつつやはり私情満載でいつも通り進んでいきます。ライブレポと呼ぶには相変わらずなにかが確実に足りない。愛は事足りてるはずなのに。



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「ありがとう」の件以外にスッと思いつくこと、といえば、あとひとつ。もちろんひとつ、と言わずたくさんありはするのだけれどこれだけは絶対に書き記しておきたいため、最初に失礼しておく。いや、これがまじで全てやろ、と思う。これが全てじゃなかったらなんなんだとも思う(なんなんだとはなんなのかわからないけど)。





映像がもう、たっまらなくよかった。これは絶対にわたしだけが思っていることじゃないだろうと思っているのだけれど、あのまさかのクオリティ、質の高さ、半端ないものではなかったろうか。出だしからもうあの大きなスクリーンに映るそれにテンションを底上げされたようなものである。なんだあれは。ほんまにそういうのやるの初めてなんか?どっかでやってたんちゃうんか?そりゃプロと一緒に作り上げたやろうけど完成度高すぎちゃうか? とまるでイチャモンをつけまくるめんどくさい関西のジジイ(偏見)みたいにもそりゃなってしまうのだけれど、ほんとうにあのクオリティはもう、チケ代が5000円代であることが急に安く思えてしまうくらいだった。(よく見る、というとなんだかありきたりだったと言っているようでそうは誤解してほしくないのだが)よく見る歌詞を入れ込んだ映像には感覚ピエロの曲調とガッチリ合わさった、疾走感溢れるものもあれば、バラード調になると急に雨の演出があったりなど、練りに練られた、細部までこだわっていることがもうひしひしと感じられた。そのおかげで(そのせいで)もう何度その映像に目を奪われてしまい肝心の4人を眼中外にしてしまったことか。と、思いきや4人にフォーカスを当てた映像が流れてくる。最高すぎて叫ぶ。この繰り返しだったように思う。いろいろ話が前後するのだけれど衣装もかなり良かった。スクリーンに大きくバチッと紳士風な衣装で決めた4人が映った瞬間、一緒に来ていた友人と思わず2人してらしからぬ黄色い声を上げてしまった。「タッキーパイセン、いつもあの水色の縦しまのシャツよな〜わたしあれしか見たことないねんけど」「それは笑う。あの胸に黒い丸ついてるやつな。まああれが衣装なんちゃうん?かわいいからええやん」なんて行きの電車の中でも公演が始まるすぐ直前にも話していた、それがなんだか伏線となってしまったようでそれも相まってボルテージはグングン上がった。いい意味での裏切りがすごい。どれだけこの幕張ワンマンを開催するにあたって、秋月さんだけじゃもちろんないだろう、たくさんの人が頭を回し、脳を使い、これだけのクオリティを作り出したのかと、本当に察するにあまりある。


だがしかし。心のどこかであれくらいのクオリティをちゃっかり秋月さんに、感覚ピエロに対して期待していた自分もいなかったわけではない。今回のグッズの件(急に紫ロンティーを出してきたりめちゃシャレオツな透明バックを2種類もつくってきたりぶかでかパーカーをクールビューティーなお姉さんに着せて見せつけてきたり)もそうだが、秋月社長ならぜったいにそうしたビューティフル、かつアグレッシブ、かつエモーショナルな演出などはやらかしてくれるのではないかと、心のどこかで思っていた部分もあった。1年にも満たない、むしろ半年も経っていないファン歴のわたしがこうなのだから古巣の方たちはきっと、いやもう既に期待とかではない、信頼のようなものを社長・秋月琢登には持っているのかもしれない。そしてその期待や信頼みたいな目に見えないものでもちゃんと感じとってくれ、かつ緊張もしまくり、そして大舞台ではそれはもう最高のクオリティで私たちを楽しませてくれる彼(を含め感覚ピエロ)にはもう、足を向けて眠ることなんて到底できやしないだろう。今までももちろんそうだったのだが、幕張ワンマンで感じたことを思い振り返ってみると、その気持ちがいちばん以前より大きくなったように思う。さあ、改めて声を大にして言いたい。感覚ピエロをずっと支え続けてきた社長ことギター担当の秋月琢登は、小並な言葉で申し訳ないが、本当にすごい。本当にすごく、格好いい。最高です。DVD、本気で楽しみにしてます。カット割りとかそういうのも含め。




ベース担当・滝口さんについて書き記すとなるともう永遠と続けられるくらいなのだが、大きなあのステージ上だとしても、どれだけ見に来てくれる人が沢山いようといまいと、相も変わらず楽しそうに、そして暴れまくりながら弾いていて、ほんとうに見ているだけで楽しかったということは真っ先に伝えておきたい。ライブにおける『楽しい』という感情はかなり大事だと思っていて、それを体全体、音全体、滝口大樹(タッキーパイセン)という人間全体で表すことができるこの人は、本当にカッコイイと思う。楽しませる、という気持ちもしかりだが、おそらく彼自身もこの場を大いに楽しんでいるのであろうことが滲み出るようにしてこちらにも伝わってきて、時たまスクリーンに抜き出される微笑むような、ほくそ笑むような表情を見ればもう心臓を撃ち抜かれる思いしかなかった。しかし暴れ回るだけがもちろん滝口さんの本業(本業?)ではない。後半戦、『さよなら人色』からの『夜香花』ではしっとりとしたムードとなればそれと相まった、色気のあるパフォーマンスを見せてくるなど、魅力はどれだけ伝えたって足りないくらいだ。階段の上に立ち、スポットライトを当てられながらのあの美しい立ち姿、許されるのであればもっと近くで見たかった。前の方の人にはどういう風に見えていたのだろうか。


「ベーシストとして確立したい」その気持ちをわたしは本当に、本っ当に心の底から応援したいと思っている。応援というよりももう、グイグイッと背中をもはや押してやりたいくらいである。誰の背中なのかあまり分かっていないのだけれどまあそれは置いておいて、彼のパフォーマンスを見る度好きになっていく、自分の彼に対する『好き』の伸びしろに毎度自分自身でびっくりしているくらいなので、相当好きなんだろうなあ、と他人事のようにも思ったりする。あとはそうだな、強いて言うなら、しゃ、喋ったで!と思ったら「みんなには言うてへんかってんけど……」などという完璧な喋り出しで急に胸をグワッと鷲掴みにしてくるような話題を出してくるのはやめていただきたい。でもきっと、大舞台だからこそ言えた言葉なんだろうなと、そう思うと書いているこの今も涙がちょっと出そうになったりもしているんですが、「集合写真撮りたいなあ」というつぶやきなどもろもろ、その後いかがでしたでしょうか。秋月さんの「じゃあお前だけ打ち上げは別やな」の優しいあったかい(?)言葉にはもう、愛を感じて仕方がなかったです。「なんでやねん!」っててっきり言うんかと思ったら言わへんしニコニコしてる(んだろうなと思った)し、なんか逆にふつうに泣きました。より好きになりました。大好きです。あ、意外と短く済んでよかった。





結局セトリにほとんど触れないままかなりの文量に来てしまっている(とおもう)のだけれど、個人的にはアンコールの2曲、よりもそれまでの、そのアンコールの2曲に行くまでの流れがかなり好きだなと思っていたりする。(いい意味で)案の定その2曲を残してきたので、セトリだけを見るとその2曲を楽しみにさせたい、楽しんでもらいたいがための流れなのだろうか、と思いたくもなるのだが、それまでもずっと、気持ちの高揚が終始続いていたように思う。これも上手く言えないのだけれど、『メリーさん』の受話器のベル始まりもそうだし、『無い ナイ 7i』からの『A BANANA』もそうだし、感覚ピエロの曲は振り幅が大きいとは思うのだけれどブチブチと集中が切れるようなことは(当たり前なのだろうが)全くなかった。強いていえば、『さよなら人色』からの『夜香花』の2曲を並べてきたことだろうか。これはかなり意表を付かれちゃったなあ、と思った。胸の奥底からじわりじわりと込み上げてくるなんともいえない、おもわず唇を噛み締めてしまうようなそういうバラードならではの気持ちの盛り上げられ方もあるのだなと、頭の中では冷静に考えていたが涙腺はそのタイミングでもちろん馬鹿になった。セトリの話をする、ということはそれはもう書き手の曲の好みによりけりなんじゃないの、なら自由に書くだけ書くけど、とポイッと放り投げるような感じにはなるが、個人的カラオケ十八番である『ありあまるフェイク』がアンコール前のラスト曲だったことにはもう頭を抱えるしかなかったなと思い返す。「君にはなにが見えてる その目で今をさあ」と入るボーカル横山さんの美しくも繊細な伸びのある声といったらもう、まったく言葉にならない。大きな会場だからよく響いてもうそれが良くって、とかでは無い、元々響きのよい声がもっと響くのだから、やはり言葉にならない。言葉にしないと感想として成り立たないだろうが、「何も言えねえ」状態であるということで察してほしい。


いろんな人がもうたくさんたくさん言っていて感エロファンはもう見飽きていたり聞き飽きているかもしれないが、横山さんの歌のうまさはもう胸をめちゃめちゃ張って自慢したいくらいの誇りである。曲調が変わった?そんなの変わった変わらねえの話なんかじゃない。そんないい声を持ってるんだから色んな曲を歌ってもらえば万々歳じゃないか、何を言ってるんだか。そういうお方は新曲『Sing along tonight』を今すぐ聞くように。バチバチにかっこいいので心しなさい。1:25あたりの片脚あげる滝口さんとそのあとのベースソロがこれは本気で本当に心の底からオススメ(オススメというか刮目してほしい)。体が震える。いや違うな、改めて見たら全部おすすめだった。衣装もシンクロしてるというかこっちは白で幕張は黒……? ここも考えられている(?)のであろうことにももう感動せざるを得ない。




感覚ピエロ『Sing along tonight』 Official Music Video




感覚ピエロに出会ったのが今年の5月。それからずっと、わたしはこの幕張メッセワンマンをずーっと楽しみにしていた。100日をあっという間に切り、いつのまにか10日後になり、気づけば東京に飛んできていてもうついに明日。はやる気持ちがとにかく抑えられなかった。しかしそうして体全体、心全体で楽しみにしていた反面、感覚ピエロだけじゃない、他のバンドを見る際も幕張メッセイベントホールなんていう大きな会場でライブを見たことがなかったわたしの中には不安も、確かにちゃんとあった。どのくらいの大きさで見えるんだろうか。そもそもちゃんと見えるのか。指定席ライブって、もみくちゃになれないけどそれは楽しいのか? もちろんそんなものは全て杞憂に終わったわけだが、それは彼らのライブを見るよりも前に、会場に到着して「うわ、こんなにたくさんの人が感覚ピエロ“だけ”を見に幕張に来たんか、すごいな」と思ったところでスウッと消え去っていったのだから、言い方はあれだが、「面白いなあ」と思った。それはバンドを好きになる面白さだったりもするし、どのライブを見るか選択するという意味の面白さ、でもある。



邦楽ロックだけでいってもかなりのバンドがいるだろう。わたしが確認しただけでもその日、オーラルやマイヘアのグッズを身につけている人を、それも何人も見かけた(特になぜかオーラルグッズを身につけてる人を5人くらい見たしパラデジャロンTを着ている人を見つけてそれは正直羨ましかった)。たくさんのラバーバンドをリュックにつけている人もいたような気がするし、きっと多くの人は『感覚ピエロ“だけ”を見に来たけれど、感覚ピエロ“だけ”を好きな訳ではない』のであろうことがなんとなくではあるが、分かった。11月4日月曜日は振替休日という名の祝日で、横山さんも言っていたが他にもいくつもライブは重なっていたりもした。かくいうわたしも、Age Factoryが奈良にある大学の学祭にそのまさに11月4日月曜日、出演するという情報を随分前から確認済みだった。それなのにわたしは幕張メッセにその日ちゃんと居たし、感覚ピエロを選び取っていた。もちろん主催者側からするとソールドアウトできなかった悔しさは大きかったりするんだろう。その気持ちは大いにわかるし、わたしだってもちろん、ジリジリと心の端っこの方で切ないその気持ちをグッと抱え堪えるなどしていた。それでもわたしは2階席からぐるりと会場を見渡した時、ああ、皆なにかしら自分の気持ちに従ってこの日この時間この瞬間のために感覚ピエロのライブを見る、という選択をしたんだなと思うと、嬉しかった。みんな同士じゃないか、と肩を組みたくなった。それと同時にもっと、感覚ピエロはもっと大きくなれるだろうことを確信した。



帰り道、一緒に行った友人はかなり長くファンをしているので「なんでソールドせえへんのかな〜」とまあそれはかなり悔しそうに言っていて、そんな彼女にわたしは「まあ、伸びしろですね!」なんて本田圭佑を真似るじゅんいちダビッドソンの真似をして笑いに変えるなどしていたが、本当に伸びしろしか、ないと思う。悔しさをバネにして、だなんて安易な言葉でしか書き記すことはできないが、わたしはずっと好きでいるし東京ドームで感覚ピエロが公演する日を、大きな大きな会場で大きな大きな声で「O・P・P・A・I !!」と叫ばせてくれることを、いつまでだって心待ちにしているからもうぜひともバネにしてほしい。幕張を終えた今、次なるツアーも発表されてファンクラブまでできた今、伸びしろは増えていくばかりだろう。無くなりはしない。これからどんどんたくさんの人に愛されていく。長い道のりかもしれないし何かの拍子でドカンと爆発するかもしれないし、それは分からないけどわたしはただ、「ずっと好きでいようと思っています」としか今のところ言うことはない。





感覚ピエロが大好きだし、これをこんなところまで読んでくれた感覚ピエロが好きなあなたのことも大好きだし、感覚ピエロのことはそこまで知らないけどとりあえずここまで読んでみちゃったあなたのことはもっと大好きです。そんな人はぜひ『ミステリアスに恋して』を聴いてみてください。ね〜なんだかんだずっとミス恋を幕張メッセで聞けなかったことを引きずってるよね〜ああ〜ミス恋のイントロをばちばちにかっこよく弾く滝口パイセンを幕張メッセで見たかった〜見たかった……。もう若しかするとそれがなんだかんだ言って1番悔しいかもしれない(こら)。






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計6651文字。最後に、敬愛する友人へ、さらに愛をこめて。