晴耕雨読

晴耕雨読

忘れてしまうから残す

ツバキ文具店


身近な人、いちばん身近な家族のためになにかがひとつでもできている、したいと思える人には、それだけでもうとても大きくてステキな才能があるなと改めておもう。

好きだけど、好きとは言えない。「ありがとう」の一言もめったに言えない。「ごめんね」と素直にことばだって出てきやしない。言っても照れ隠しのように、それはさぞ早口で。言わなきゃわからないのに、なんでそこまでしてまで伝えようとしないのか。言いたいのに言えない、言わなきゃ、でも、やっぱり言えないのだ。身近にいるから、だなんてそんな簡単な言葉じゃ言い表せないなにかがそこにはあって、もどかしくて気持ち悪い、そうとさえも自分でわかっている。

そんな自分が馬鹿なことをしていたと気づいた時にはもう、その想いを伝えたかった人は、この世からいなくなっているのだろう。でもそれも、わかっているのだ。



それでも、別にいいんだよと言われた気がした。後悔なんてものはいつかぜったいにするんだと、ありきたりなことを言っているはずなのに、なぜかその言葉がとても胸にささった。



読み終わったあと、ノートの新しいまっさらなページに書き込まれたのは「母と父へ。」。それはきっと、いや、自分が生きている限り手紙にはならない。しないつもりだし、そうとなればその二人の元に届くこともおそらくないだろう。


伝えたいなら伝えればいい、そんな簡単な問題だったらとっくに自分で伝えている。でも伝えられないから、家族はきっとこじれやすいのだろう。


家族はめんどくさい。だって家族だから。家族だから、嫌いにもなるし、いつかたぶん、「ああ、大好きだったんだなあ」って思う日も、くるんだとおもう。




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