今、これが万が一にでも叶ったらもうめちゃくちゃ嬉しくて嬉しくて、もうたまんなくなっちゃってついには泣いてしまうだろうな、と思うことが心の中にいくつか存在している。書店に自分の本が並ぶ未来が来ることもそうだし、小説家として生きていけたらいいのにな、なんてことも思ったりすることもその一つだ。でも、そういうのは(仮にも今の時点では)めちゃくちゃただの空想上の夢物語で、万が一にでも、と言っているくらいだからほぼ叶わないのだろうなと諦め半分で考えている。でも、もし。ほんとうにもしもそうやって泣いてしまうかもしれないくらいそういううれしいことが起こってしまったら。そうなったらわたしはそれを、素直に、純粋に、なんの邪神もなく遠慮もぎこちなさもなく、果たして受け取れるのだろうか。うれしい、と、なんの混じり気もない心からの涙をこぼせるのだろうか?うれしいことって、うれしすぎたり重なりすぎたりするとなんだか怖い。自分の身の丈に合わないうれしさを与えられた時、それは神様かなにかによる手違いなんじゃないかと、受け取ることを躊躇してしまう気が、うっすらしている。
10歳差の友人がいる。わたしは今年で27歳だから、彼女は37歳で、来年の8月に38歳になる。もともと彼女と共通の友人が1人いて、出会った当時、その共通の友人と彼女はシェアハウスのルームメイトだった。わたしが鎌倉にいた時に出会い、鎌倉に居たのは2019年とか、になるので早いものでだいたい4年5年は友人でいる計算になる。箱根へ旅行に行ったことはかなり記憶に新しい。3人で泊まることはその時は諸事情により一人欠けてしまって叶わず、その後に岩手に行く計画も立てていたがそれはわたしが頓挫させてしまい、とことごとく上手くいかないでいたのだけれど、でも、ついに12月。3人で大阪にあるユニバに行くことが決まった、しかもついに昨日の話だ。まあほんとうは、心根としては、引越しでめちゃくちゃにバタついていて全く大阪になんか行っている暇は、毛頭ない。でも、行きたいんだもん仕方ない、仕方ない……、とシフト表を見ながら天井を仰ぐなどしている。楽しかったな、と思い返す。1年振りくらいにその10歳差の友人の家に遊びに行き、泊まり、2人ともKーPOPが好きなのでいつもYouTubeで検索しては踊り、歌い、話し、笑い、また踊って、歌った、そういういろんなことを思い出しながら毛布にベットの上で無理やりくるまる。楽しかった。仕事帰りに向かったらチーズ入りのキムチチャーハンとスーパー出来合いのエビフライとイカリングがあって、わかめスープかあさりの味噌汁かを選ばせてくれたこと。先に風呂に入ったのかと勝手に思っていてシャワーを借りたらまだで、「めちゃくちゃ自堕落だよわたし」とあっけらかんと言っていたこと。夜は元彼にもらったとかいう敷布団をわざわざひいてくれ、その上に柔軟剤のいい匂いのする毛布をこれまたひいてくれ、お父さんに買ってもらったとかいうふかふかの羽毛布団まで貸してくれたこと。いつもロフトで寝る彼女。寒くない?と何度も聞いてくれ、暑がりやから大丈夫やで、暖房も消していいよ、と言っていざ眠りにつこうとしたら暑いくらいにあったかかったこと。10時に一応かけるか、とかけたアラームを2人して聞いて2人して一旦起きたが、12時までまた2人して二度寝していたこと。幸せだった。会いたい人に会いたい時に会えて、笑って、美味しいものもたくさん食べて眠くなったらぬくぬくとした布団にくるまりながら眠れて。これでいいんだよなあ、と思いながら深夜の2時半にスマホを見るのをやめて眠ったのも良かった。楽しかったし、うれしかった。そういう幸せを感じられることがうれしく、喜ばしく、暖かく、だからまだ生きてるんだよなとよくよく思い返している。
うれしいことが重なりすぎるとやっぱり怖くはなる。まだまだがんばらないと、だめなところばかりで何に対しても上手くやれてなさすぎるのにそんな自分にこんなに喜ばしいことばかり降り掛かってくるのは不相応じゃないか?そう思ってしまってそのうれしいと思ってしまっているその感情ごと、上手く受け取れなくなることも、やっぱり時々ある。これを書いている日のさっきの夜もうれしいことばかりだった、じゃあこのうれしいことは自分の今まで行ってきた何の、どの言動に対しての報奨なんだ?と考えてしまったりもする。自分なんか、は、なるべく言いたくはない。こんな自分でもちゃんと好意を持って仲良くしてくれている、そういう人たちのそういう感情を無下にしたくはないからだ。でもじゃあわたしのこの不安はどこへ行くのだろうなあ、とも思う。思うから、ここに置いて行ければいいか、と、だから書くんだろうなとも思っている。なにも、怖いと思うことは悪いことだけじゃない。怖いんだよなあ、と思いながら、その気持ちとなんとか上手く折り合いを見つけていきながら、生き、暮らしていくだけだ。
カーテンの隙間から漏れ出る光がもう薄い青色をしている。少しだけ、ほんの少しだけそれをまぶしく思って寝転びながら無理やりそれを見えないようにする。あと3時間だけ眠ろう、今週も頑張れそうだしな、と独りでに軽く笑ってわたしはゆっくり目を閉じて、その日は眠った。